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【RPE】★外国人労働者の賃金を上げろ!にまつわるパラドックス

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       ロシア政治経済ジャーナル No.1787


               2018/6/29


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安倍総理は、外国人労働者の賃金を、会社平均まで上げるように!と主張しています。

これ、誰にとってよいことなのでしょうか?


全世界のRPE読者の皆さま、こんにちは!

北野です。

 

安倍総理は、「外国人労働者の賃金を、職場の平均賃金まで引き上げる」方針を示しました。

 

<首相、外国人労働者の賃金確保表明…党首討論

読売新聞 6/27(水) 22:15配信

安倍首相は27日の党首討論で、国内の外国人労働者の処遇について、受け入れ先の職場の平均賃金を保証すべきだとの考えを表明した。

外国人労働者の不当な処遇を防ぐとともに、外国人受け入れに伴って日本人が職にあぶれたり、賃金水準が低下したりしないようにする狙いがある。>

 

この記事を読んで、「外国人より、もっと日本人を大切にしろ!」と思われた方はいますか?

しかし、実をいうとこれ、まさに「日本人にとって」とてもよいことなのです。


ある会社に二人の男性が面接にきました。

一人は日本人。

もちろん、日本語ネイティブで、ペラペラです。

もう一人は、日本語カタコトの外国人です。


ところが、この会社は、外国人を採用しました。

なぜ?

日本人は、「時給1000円」を要求した。

一方、外国人は、「時給500円でいい」といった。

それで採用されたのです。


こういうことがつづくと、そのうち低い賃金水準がスタンダードになってしまいます。

最初は、「日本人は1000円、外国人は500円」だったのが、いつの間にか、「日本人も500円、外国人も500円」になってしまう。


それで、日本人の賃金水準が下がっていきます。


もう一つ、「労働市場に、毎年何十万人も新しい労働力が供給される」という問題もありますね。

安倍総理は、50万人の外国人労働者を受け入れると宣言している。)


この受け入れの件はともかく、「外国人の賃金を、職場の平均にあわせる」という話。

これが実行されるとどうなるでしょうか?


日本人と、日本語カタコトの外国人が面接にきた。

会社は、日本語カタコト外国人を500円で雇うことができません。

日本人と同じ給料で雇わなければならない。

するとどうなります?

面接している人は、「そりゃあ日本語ペラペラの方がいいよな」となり、

日本人を採用するでしょう。


このように、「日本人と外国人の賃金水準を同じにすること」は、日本語ネイティブの日本人を有利になるのです。

 

▼賃金差別は、外国人の犯罪を増やす

 

以前にも書きました。

私が使っている洗車場で働いているのは、ほとんどタジキスタン人です。

あるタジキスタン人が私にいいました。


「他人の車を一日何十台洗っても、全然金はたまらない。

俺の麻薬売ってる友達たちは、皆リッチに暮らしているのに。

友達は、いつも『一緒にやろう!リッチに暮らそう!』と誘う。

俺は、麻薬の密売は、アラーの意志に反していると思うから
やらなかったが、誘惑に負けそうになることがあるんだ・・・」

 

ちなみに、ロシアで流通している麻薬は、アフガンから入り、中央アジアの人たちが売っているそうです。


こういうことは、日本でもありえます。

普通の人は、法律を守りたいし、犯罪もしたくありません。

しかし、いくら働いても、食べることしかできない水準がつづくと、「違法でも儲かる」方に流れやすくなる。


「日本人と外国人の賃金水準を同じにする」

とどうなるでしょうか?

「厳格に実行されたら」と仮定して考えます。


まず第一に、日本語を話せない外国人は、仕事につきにくくなるでしょう。

つまり、「日本語をペラペラ話す」というだけで、日本人が有利になります。


第二に、日本語をペラペラ話す外国人の給料は上がるでしょう。

そのことは、彼らがシャドウサイドに流れるのを防ぎます。


第三に、日本が極端な格差社会になるのを防ぎます。

 

モスクワの状況を見てみましょう。

朝起きて家を出る。

道路の清掃をしているのは、皆中央アジアの人達です。

スーパーに入ると、従業員の多くは、中央アジアの人達です。
(ロシア人も、たまにいる。)

建設現場で働いているのは、ほとんどが中央アジアの人達です。

タクシーの運転手をしているのは、ほとんどが中央アジアコーカサスの人たちです。(ロシア人もたまにいる。)


モスクワは、ロシア人と3K外国人労働者、移民でくっきりと人生の明暗が分かれてしまいました。

そして、ロシア人は、「移民が多すぎる。イスラム教徒だらけだ!」と憤り、

3K外国人労働者は、差別を感じるのと長時間低賃金労働に怒りを感じています。


私は、日本人ということで、中央アジアコーカサスの人たちとも気楽に話すことができます。

打ち解けてくると、彼らが口にするのは、ロシアやロシア人に対する静かな怒り、憎しみです。

ロシア人はロシア人で、「なら、来るな!俺はおまえたちを呼んでない!」と憤っている。


ちなみほとんどのロシア人も中央アジア人も、話してみると善良な人達です。

間違った政策が、善良な人達同士を対立させているのです。

 

▼日本語試験の導入を

 

以前にも書きましたが、ロシア人と3K労働者、3K移民の対立は、居住権の取得に「ロシア語」「ロシア史」「ロシア法」のテストを必須にした後、沈静化しました。

それで、日本でも、少なくとも仕事で来る人たちは、「日本語テスト」を必須にすべきだと思います。


(結婚してくる人たちに関しては、「日本語が話せないから」という理由で家族を引き離すことはできないでしょう。

たとえば男性が日本人。

奥さんアメリカ人で日本語ができない。

それでも、もちろん受け入れるべきですね。

その場合、彼女がきちんと日本語が話せるようになるよう、サポートすることが必要。

実際、サポートする仕組みは、すでにあるようですが。)


どんどん話がそれていきますが、この件に関するメールをご紹介しましょう。


<Oさまからのメール

北野様

こんばんは。

いつもモスクワでメルマガを読んでいます。

ロシア語の試験とロシアの歴史の試験が始まったと書いてありましたが、ロシアの法律のテストもあります。

私はロシア人との国際結婚ですので、ロシア語の試験、ロシアの歴史、ロシアの法律のテストを受けました。

国際結婚でも労働者と同じです。

試験は簡単でしたが、移民局のシステムが非常に大変でした。

まず、私の自宅から移民局まで片道100km離れています。

書類を提出する前日に翌日の予約を移民局へ行ってとらなければなりません。

夫の仕事が休みの日しか行けないため、土曜日に予約へ行き、日曜日に書類を出すということを繰り返し、9回目にして書類が受理されました。

2か月かかりました。

その後、半年の審査期間を経て一時居住権を取得できるのですが、移民局の作業が遅くて、結局8か月待って取得できました。

その間、90日間でビザが切れるため、日本とモスクワを往復しました。


日本も日本語のテストと日本の法律(ゴミの出し方などの生活の決まりなど)のテストを日本語で出題するべきだと思います。

モスクワに住む前に外国人児童に日本語を教える仕事をしていました。

私がその仕事を始めた2012年ごろは、出稼ぎで日本へ来た両親の生活が落ち着き、自国に置いてきた我が子を日本へ呼び寄せる形が多かったです。

そのため、両親は日本語がよくでき、子供は日本語が分からないという状態でした。

しかし、2015年になると、両親も子供も日本語が分からないけれども、一か八か日本へ行ってみようという家族が増えてきました。

そして、日本語が分かるようになってきた子供たちに訊いてみると、中国では「日本で楽に暮らす方法」というような本がバカ売れしているということでした。

それを読んで日本へ来たという子がいました。

この話を聞いた時、日本語の試験をした方がいいなあと思いました。

これからもメルマガを楽しみにしています。

そして、いつかモスクワ市内でばったり会える日があるかなあと思っています。>

 

いかがでしょうか?

3K労働者、3K移民の問題は、本当に重大です。

アメリカでも欧州でも大問題になっている。

それで、「アメリカとメキシコの国境に万里の長城をつくる!」と宣言したトランプのような男がアメリカの大統領になる。


日本政府は、善悪吟味せず、何でもかんでも欧米の真似をしますが、もう少し欧米の悲惨な現状を勉強した方がいいと思います。

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今回は、「外国人の賃金をあげると、日本人が得をする」というパラドックスの話でした。

同じように、世界には、パラドックスが満ち溢れています。


「日本のために」と思ってやったことが、実は、「中国の罠だった」「中国が得をした」ということが多々あるのです。どんな罠?

全部知りたい方は、こちらをご一読ください。

 

中国に勝つ 日本の大戦略 プーチン流現実主義が日本を救う

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