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【RPE】★日朝首脳会談の【 罠 】

RPE Journal==============================================

 

       ロシア政治経済ジャーナル No.1777


               2018/6/19


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日朝首脳会談にむけた準備がはじまっているそうです。

全世界のRPE読者の皆さま、こんにちは!

北野です。


米朝首脳会談が終わり、今度は日朝首脳会談の話が進んでいるようです。

 

<日朝会談へ本格調整 正恩氏「首相と会ってもよい」

産経新聞 6/14(木) 7:55配信

12日の米朝首脳会談で、北朝鮮金正恩キム・ジョンウン朝鮮労働党委員長がトランプ米大統領に対して「安倍晋三首相と会ってもよい」と述べていたことが13日、分かった。

これを受け、日本政府は日朝首脳会談の本格調整に入った。>

 

この話、すでに大々的に報じられていますので、皆さんご存知でしょう。

今回は、この会談の注意点について書きます。

 

▼「キッシンジャーファクター」を心配する必要は、もうない

 

日本政府が日朝首脳会談の話をはじめたのは、3月です。

トランプが3月8日、日本に何の相談もなく、突然「金に会う!」といいだした。

それで、「傷ついた」日本政府が、「じゃあ、俺も会う!」と主張しはじめた。

一種の「対抗心」ですね。


実をいうと、日本は46年前、アメリカを激怒させた前例があります。

冷戦時代の初期、アメリカは共産党一党独裁国家・中華人民共和国を敵視していた。

しかし1970年代初め、強大化するソ連に対抗するため、中国との和解を決断します。

71年、時の大統領ニクソンは「中国から訪問要請があり、それを了承した」と発表。

このときもアメリカ政府は日本に何の相談もせず、日本側が発表内容を知らされたのは、発表の15分前だった。

当然、日本政府は大きな衝撃を受けます。

ニクソンは72年2月、歴史的な訪中を果たしました。

一方、日本では同年7月、田中角栄が総理大臣に就任。

彼は、同年9月に訪中。

「アッ」という間に「日中国交正常化」を成し遂げてしまった。

ちなみに米中国交正常化が実現したのは、7年後の79年。


米中和解を主導してきたキッシンジャー大統領補佐官は、アメリカを「出し抜いた」日本に激怒。


「ジャップは最悪の裏切り者!」


と絶叫したことが、明らかになっています。

共同通信2006年5月26日から。


<「ジャップは最悪の裏切り者」(解禁された米公文書より)72年にキッシンジャー

【ワシントン26日共同】ニクソン米大統領の中国訪問など1970年代の米外交政策を主導したキッシンジャー大統領補佐官(後に国務長官)が72年夏、田中角栄首相が訪中して日中国交正常化を図る計画を知り


「ジャップ(日本人への蔑称(べっしょう)」


との表現を使って日本を「最悪の裏切り者」と非難していたことが、26日までに解禁された米公文書で分かった>

 

この「日本嫌い」のキッシンジャー

90歳をとっくに超えた今も、なんとトランプさんの「最高顧問」的立場にある。

それで私は3月、「田中角栄の過ちを繰り返すな!」と何度も書いてきました。

幸い安倍総理は、トランプを出し抜いてキッシンジャーを怒らせることがなかった。

そして、6月12日、「歴史的」米朝首脳会談が行われた。

ですから、日本はもう、「キッシンジャーファクター」を考える必要がなくなったのです。

 

▼なぜ、金は日朝首脳会談に前向きになったのか?

 

これはやはり、「トランプが金にいったから」でしょう。

というのも、金にとって、トランプとの関係は、「命がかかった」問題です。

トランプとの関係がよければ、彼は北朝鮮を統治しつづけ、長生きし、安らかな死を迎えることができるかもしれない

逆に、トランプとの関係が破壊されれば、彼は、フセインカダフィのように惨殺される可能性が高い。

だから、トランプから、「拉致問題なんとかしてくれ」といわれたら、「わかりました」といわざるを得ない。

 

米朝首脳会談で、トランプ氏は「完全な非核化を実現すれば経済制裁は解くが、本格的な経済支援を受けたいならば日本と協議するしかない」との旨を金氏に説明。

その上で「安倍首相は拉致問題を解決しない限り、支援には応じない」と述べたとされる。

この説明を受け、金氏は、安倍首相との会談に前向きな姿勢を示したという。>

産経新聞6月14日)

 

面白いですね。

アメリカは「制裁を解くことができる」。

しかし、「経済支援は、日本から受けとってくれ」と。

そのためには、「拉致問題を解決しなければならない」と。

トランプさんらしいです。

 

日朝首脳会談の【 罠 】

 

これから書く部分、安倍総理には、よく自覚していただきたいと思います。

日朝首脳会談には、【 罠 】があるのです。

 

まず、大人の私たちは、「無料で拉致被害者が返ってくる」とは思わないでしょう?

非常に理不尽ですが、「身代金」を払う必要がある。

もちろん「身代金」とはいわずに、「経済支援」といいます。


ところが、日本は現段階で、「経済支援」をすることができません。

なぜでしょうか?


北が「対話路線」になったのは、「制裁が効いて苦しくなったからだ」といいます。


北から「拉致被害者を返すから、経済支援してくれ」と提案され、日本が同意したとします。

そして、日本は、実際に経済支援を実施した。

すると、北朝鮮経済は潤って、どうなります?


「金が入ってくるようになったから、非核化や~~めた!」


となるでしょう。

すると、「日本のせいで、核のディールはぶち壊しだ!」となってしまう。

(そして、北が核を保有しつづければ、日本も困ります。)

 

▼動けない日本

 

金正恩は、これまでの北朝鮮の「成功例」を繰り返している。

つまり、「非核化を約束し、制裁を解除させ、経済支援をうけとり、核兵器保有しつづける」。


安倍総理が、金と会った。

金はいいます。


「調査した結果、生存している拉致被害者が見つかった。日本に帰国させる準備があるが、つきましては、金ください」


こういわれたときに、はたして安倍総理は「大局にたって」「まだ経済支援はできない、非核化が実現してから支援することは約束できる!」

といえるでしょうか?

ここが最重要ポイントであり、この部分が北朝鮮の【 罠 】なのです。


拉致被害者の帰国が実現されること。

これは、まさしく全国民の悲願でしょう。

しかし、そのために、金に金(かね)を与えれば、彼は元気になり、トランプに、「せっかく作った核を放棄するか、老いぼれ!」などといい、「ディール」を破棄するかもしれない。


その時、キッシンジャーは、「ジャップは今も昔も裏切り者!」と絶叫し。

トランプは、「シンゾーのせいでディールはぶち壊しだ!」と嘆くことでしょう。


そして、北が核保有をつづけると、日本もとても困ります。

 

▼まとめ

 

ここまでの話、まとめてみましょう。


・金が安倍さんに会いたがっているのは、金(かね)が目当てである


・しかし、「拉致被害者を返す」といわれても、現段階で経済支援してはならない


・経済支援をすれば、金は余裕ができ、「やはり苦労して手に入れた核を放棄することはできない!」と宣言するかもしれない


・そうなると、「シンゾーのせいでディールはぶち壊しだ!」となってしまう


では、どうすればいいのでしょうか?

一番いいのは、非核化が終わるまで、会わないことです。

非核化が終わった後なら、会えばいい。

そして、金が「経済支援してくれ!」といってきたら、「拉致被害者を全員返してくれたら、喜んでいたしましょう」といえばいい。


ところで、安倍総理が金に会いたい件について、「選挙対策だ」という声を耳にします。

ホントかわかりませんが、そうだとしたら愚かなことです。なぜ?

この問題の結果は、大きく二つしかないからです。


1、安倍さんは、経済支援を拒否し、拉致被害者は戻ってこない


2、安倍さんは、経済支援を約束し、拉致被害者が返ってくる金は日本から金(かね)を得て余裕ができ、核兵器保有継続を決意。

トランプの「非核化ディール」はぶち壊しになる。


というわけで、私は「日朝首脳会談」を勧めません。

もし、「拉致被害者を返すから、経済支援を」とオファーされ、「非核化が実現するまで無理です」と断れば?

日本のマスコミは、「千載一遇のチャンスを逃し、拉致被害者を見捨てた冷酷非道な安倍!」と叩くでしょう。


もし、経済支援を約束し、拉致被害者を取り戻せば、「安倍のせいで、金は核をもちつづける余裕ができた!大局を読めない、ダメ首相だ!」

と叩くでしょう。


というわけで、会わないのが一番いい。

しかし、それでも会うという話になれば、「核兵器、ミサイル廃棄、拉致被害者帰国。」

この三つが成った暁には、経済支援を実施します。

北朝鮮が、東アジアのシンガポールになるのを全面的に支援しましょう!」


などと、「原則論」でいくことをお勧めします。

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世の中、ホント、「狐とタヌキの騙し合い」ですね。

どこに真実があり、どこにウソがあるのでしょうか?

知りたい方は、こちらをご一読ください。

全部わかります。

 

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